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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)846号 判決 1960年11月29日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中村喜一、同坂井宗十郎の上告理由について。

論旨は、原判決が不動産に関する所有権取得につき登記を経なければ、これを以つて第三者に対抗し得ないことは、第三者の善意悪意及び予告登記の有無に拘りのないものであると判断したのは、民法一七七条、不動産登記法三条に違反すると主張する。

しかし、不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があつた後、右売買契約が解除せられ、不動産の所有権が買主に復帰した場合でも、売主は、その所有権取得の登記を了しなければ、右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権の復帰を以つて対抗し得ないのであつて、その場合、第三者が善意であると否と、右不動産につき予告登記がなされて居たと否とに拘らないことは、大審院屡次判例の趣旨とする所である。(明治四二年(れ)第一〇八七号、同年一〇月二二日大審院刑事部判決、刑録一五輯一四三三頁、明治四三年(れ)第一九六六号、同年一一月一日大審院刑事部判決、刑録一六輯一八二一頁、大正一〇年(オ)第八七六号、同年一二月一〇日大審院民事部判決、民録二七輯二一〇三頁、昭和一三年(オ)第二一七九号、同一四年七月七日大審院民事部判決、民集一八巻七四八頁、大正五年(オ)第八一二号、同年一一月一一日大審院民事部判決、民輯二二巻二二二四頁)いま遽に以上の判例を改める要を見ない。されば、以上と同趣旨の原判決は正当であつて、論旨は、これと異る独自の見解に立つて原判決を非難するにすぎない。

論旨は、理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

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